これは、実際に携帯ショップであった話です。
8月、ある真夏の朝、テルルモバイル鎌ヶ谷にご年配のご夫婦の山下様（仮名）がご来店された。
下を向きながら…表情は暗い。
その手には携帯電話のカタログや見積書が詰まった大きな袋を持って…
その雰囲気を察知した越智はすぐさま駆け寄ったところ、その奥様から
「孫達にスマホを持たせてあげたいのですが何かいいものはありませんか？
できるだけ安いものがいいのですが…。私達が使うわけじゃないけど大丈夫かしら？」と。
相変わらず表情は暗い。
「大丈夫ですよ！まずはお話をゆっくり伺いますのでお座りください」と優しく声をかけた。
そして越智は気になっていたことを伺うことから始めた。
「たくさんカタログなどを持っていらっしゃいますけど、
何店舗も携帯ショップに行かれたのですか？それとも分かりにくいことがございましたか？」
すると、今度はご主人様が…
「色々周ったんだけど、仰る通りでよくわからないんだよ。」と。
携帯ショップに来店されるお客様では、よくある回答であった。
しかしその時点で、このお客様の表情から何か別の意図があることも越智は気がついていた。
「これだけ沢山の説明を店舗で聞かれて大変でしたね。
お客様のご希望はお伺いできたので1つずつ説明していきますね！
分からないことなどあればその都度クリアしていきましょう！」と言って話を進めた。
なぜお孫さんに携帯電話が必要なのかなと思いながら、
越智はお孫さんの基本情報を確認しながら、
わかりやすい丁寧に機種を比較しながら説明を始めた。
話を進めている中で、やはり違和感を感じていた越智はここで
気になっていることを切り出した。
「お聞きづらいんことですが、お孫さんのスマホを何故お探しになっていらっしゃるのですか？」
すると、奥様がようやく口を開いた。
「実はね、この子達の母親が一昨日亡くなったのです。本当に急だったのです。
それで孫2人が今回離れて暮らすことが決まって。
学校の関係とか色々重なっちゃって…」
10年以上、店頭で接客している越智でさえも衝撃があった。
「そうだったのですね…」と言うのが、その時の精一杯だった。
更に奥様から堰を切ったように話が続く…
「だけど携帯とか何も持ってなかったから…
電話とかLINEって言うのかしら？
兄妹2人が離れていても少しでも寂しくないようにしてあげなくちゃと思うばかりでテルルに来たの。
ただ、私たちは携帯のことが分からないし、
これまでどこの携帯ショップに行っても事情は聞かないで料金の話ばかりだったから買いたくなかったの。
売ることばかりで…」
「越智さんの説明が一番よく分かったし、事情も聞いてくれて、
この人なら…と思い胸の内を話そうって思えました。
同じ携帯電話だから、どこで買っても同じものだし私たちの事情なんて関係ないのにね。
ありがとう。私たち嬉しかったの。本当にありがとう、今日契約していくわね！」
「ありがとうございます！」
ベテランの販売員が絞り出した言葉。
契約が無事に終わり、山下様ご夫妻が笑顔で帰られる姿を見送りながら、
越智はその安心された表情は今も忘れられないと。
そして今回のことを通じて多くのことを学んだ。
携帯電話によって繋がるかけがえのない大切な気持ち。そして安心感・喜びなど。
越智は同僚にもこの話を伝えた。
自分たちは携帯電話を作っているわけではない。
お客様の一人ひとりの豊かな人生を創るお手伝いをしていることを。
後日、山下様とそのお孫さんが、外で清掃をしていた越智を見つけ、駆け寄ってきた。とても嬉しそうに。
買ったばかりのシュークリームを手にして。
そして「あなたに会えてよかった、本当にありがとう」と。
その時聞いた話だが、山下様ご夫妻がテルルの前を通りかかる度に、
今日も越智さんがいるのかな？と、いつも楽しみに眺めているそうだ。
『出逢いで人は変わる』
このご縁を通じて、またテルルのファンが増えた。販売しているのは、モノでなくコトだと。
人と人を繋ぐ素晴らしい仕事であること。
生活ではなく人生を変えることのできるものであること。
そしてこのようなことを感じることが出来る会社の仲間に、改めて自信と誇りを持てること。
今日も越智はお客様に喜ばれることだけを考え、いつものようにフルスイングで向き合っていることであろう。
「何を買うか」でなく「誰から買うか」ですね。
そして、
『お客様の一人ひとりの豊かな人生を創るお手伝いをしていることを』
こんな価値観で仕事していきたい。
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